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第伍輪 異なる同じ時間軸
2005-12-25 Sun 18:15
「魔法の普及は、多くの人間に幸せと災いをもたらしましたが、中でも最も喜んだのは、その頃旧大陸の北方で覇を唱えていたエルヴァーン族の国家―――。」
朝の騒動からしばしの時流れ、教卓でスタン先生がサンドリアの歴史について朗読していた。
『歴』と呼ばれるその授業は、スタン先生の担当教科であり、わかりやすいと生徒からも評判の良い授業である。
もちろん、当のユミもスタン先生の授業は好きなのだが、今日はまるで耳に入ってこない様子だった。
頬杖をつき、一人窓の外を見つめている。そこに何があるわけでもない。
ただ一点をぼーっと見つめ、時より小さな溜め息をこぼしていた。
(はぁ…。)
また一つ、やりきれない気持ちの塊が、重い溜め息としてこぼれ落ちた。
考えることはいつも同じ。限られた言葉を何度も頭に浮かべて、それを自分なりに解釈しようとするも、結局のところ何も解決しない。
そんな一連のサイクルを、ユミは何度も繰り返していた。
そして今再び思うは、黒い炎のようなものに包まれたあの謎の女。
その実体は大人だったのか子供だったのか、またどの種族だったのか、身を包む黒い炎に気を取られ、まったくわからなかった。
唯一わかったのは、冷たい声は女のものだという事。
一体何者なのか―――。
ユミはゆっくり目を閉じ、女をもう一度思い浮かべてみた。
頭を真っ白にし、そのスクリーンの上に彼女を浮かべる。
あの時と同じように、ユミを見下ろすような角度で…。
すると、突然自身の意識が思わぬ光景を見せた。
真っ白なスクリーンの上にいる女が向きを変え、まるで誰かと話しているような姿が見えた。
何を言っているかはわからない。だが、確実にその先には「相手」が存在している。
誰なのか? ―――その答えはすぐに出た。
女を中心に映していた視点は、女の向いている方向へと少し移動し、その先のビジョンをうっすらと映し出した。
あれは―――。

同じだった。その先に現れた人物は、女と同じ格好をしていた。
黒いローブに、目深に被ったフード。
しかし、見て取れる違いがいくつかある。
黒い炎。その人物にはそれらしきものが見えない。はっきりとではないが全身がわかる。
そしてその全身から見て取れる体格。黒いローブのせいで男女の区別はつかないが、体の作りからしてヒューム族かミスラ族の大人のように見えた。
視線はやや下を向き、女を見下ろすような角度で話している。
炎に包まれ全身は見えないものの、もしかしたら女は子供―もしくはタルタル族なのかもしれない。
何故こんな光景が見えているのか、ユミにはまったくわからなかったが、今はそんな事よりも二人の会話の内容が気になって仕方がなかった。
ユミは無意識ながらもなんとか二人の会話を聞こうと集中した。それが本当に自分自身の力なのか定かではないが、少しだけ二人の会話が耳に届いた。
「――間違いではない――」
炎のない人物がそう言っている。いや、そう言っているように聞こえた。
その声は、女の声のように聞こえるが、あまりに小さすぎて判別できない。
「まだ決断を下すのは早い。」
あの女の声だ。背筋も凍るような冷めた声。
ユミはその声だけは、しっかりと聞き取ることができた。
決断を下すとは、一体何を意味するのか?
それは解決への糸口ではなく、更なる疑問としてユミの中に残った。
二人の会話はまだ続いている。
ユミは真相が知りたくて、更に意識を強めた。
これは夢ではない。根拠のない意志だったが、何故かそう感じる。
ほらだって、自分の体は今教室の椅子の上にあって、手に力を入れれば―――。

ユミはふと誰かに揺すられていることに気づいた。
「(ちょっとユミ!)」
(え?)
そうだ。今は授業中だったんだ。
ユミは一瞬にして我に返った。そして何を思ったか突然立ち上がった。
「はい!」
時は止まる。教室にいた誰もが振り返り、ユミを驚きの眼差しで見つめた。
スタン先生も読んでいた本から目を離し、疑惑の目でユミを見ている。
「…質問ですか?。」
そう言われ、ユミはやっと今の状況を把握することができた。
「あ…いえ、何でもないです。」
ユミは真っ赤になり、慌てて席に着いた。
「(ユミ本当に大丈夫?何か変よ?)」
ユミを現実の世界へ引き戻したのはキヨだった。
『歴』の教科書で顔を隠し、スタン先生に見つからないようにユミに話しかけている。
「(…うん。大丈夫。)」
一拍遅れてユミは返事をした。変だと言われてしまうのも無理はない。
心此処に在らずとは、まさに今のユミの事だ。
大丈夫だと苦笑いをするユミの表情に、これっぽちも「大丈夫」の色など見えない。
キヨは心配で仕方がなかった。
あの手この手でユミを元気づけようとするが、笑ってくれるのも刹那の時。
こんな時自分に出来ることは、いつもユミが笑ってくれる「大袈裟な仕草」。
しかし、これほどにまで変化が見えないユミは本当に珍しかった。
いやむしろ、今までなかったかもしれない。
キヨは、次第に何も出来ない自分自身に苛立ちと無力さを感じ始めていた。
「(キヨ、本当にありがとう。)」
それに気づいたのか、ユミが精一杯の笑顔でキヨに言った。
キヨは思わず、その言葉と表情に涙しそうになった。
自分が一番つらいはずなのに…。理由はわからなかったが、ユミのその心遣いにキヨは強く胸を打たれた。
そして、意を決したように顔を持ち上げ、ユミに笑って見せた。
「(放課後、どこか遊びに行こっか♪)」
自分が落ち込んでいる場合ではない。まだやれる事はたくさんある。
「(うん。)」
強く心にそう思いながら。
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第肆輪 朝、誰もいない部屋
2005-12-11 Sun 10:08
カーテンの隙間から差し込む朝日が、部屋の一角を照らす。やわらかな風がその光をゆらゆらと動かしていた。
昨日の事を考えながらも、いつの間にか眠ってしまっていたユミは、鳥達のさえずりと共に目を覚ました。
「んん…。」
ゆっくりと体を起こし、まだうまく機能しない目をこすった。
はっきり開けていく視界の中、ユミは隣にモグがいない事に気がつく。
(あれ?)
あたりを見渡せどその姿はない。
ユミは自分の部屋を出て、キッチンへと歩いた。
綺麗に片づけられた机の上、ユミは一枚の置き紙を見つける。
(?)

―ユミへ
今日は少し早く出ます。もしかしたら出張になっちゃうかもしれないので夜は好きな物を食べて下さい。ごめんね。

そこまで読んで、ユミは無意識に眉をひそめた。
机の上に、ヴァナの硬貨が数枚置いてあるのに気づく。
これで買いなさいということだろう。
ユミは置き紙に目を戻した。続きがある。

―後、モグちゃんの事だけど、いつもの里帰りみたいだから、あんまり気にしないで。

「あ、そっか。」
ユミはふと思い出した。
モーグリ族は、いつも病気になったり精神的に不安定になると、その翌日忽然と故郷へ帰ってしまう。
おそらく、それがモーグリ族にとって最善の治療法であるには間違いないが、その真相や故郷の場所など、一度たりとも口にしたことがなかった。
数日経って家に戻って来る時には、やはりあの愛らしい声で「ご主人様、突然の留守ごめんなさいクポ。」などと言われてしまうと、何も言えなくなってしまうのである。
そして当のモグも、ナツミに仕えはじめてから何度か故郷に帰っていた。
ナツミはおそらく、今回もそういう事情だろうと思ったのであろう。
(本当にいつもの里帰りなのかな…?)
ユミだけは、その里帰りに何かひっかかるものを感じていた。
「はぁ…今日は独りか。」
自然とため息がこぼれる。
普段は決して広いとは言えない我が家も、今日はやけに広く感じた。
それは、独りきりという現実もさる事ながら、ユミは昨日の事が気になって仕方がなかった。
明日になったらお母さんに話そう。そう決めた矢先のことだったから…。

―コチ、コチ。
静止した時の中、ユミの耳には時計の秒針の音が聞こえた。
(時計?)
ユミはおもむろに時計に視線を向けた。
「あ"ぁぁ!!」
そして突然発狂すると、ユミはパニック状態に陥った。
その時計が告げたもの―。
「遅刻しちゃうぅぅぅ!」
そう、ユミはバストゥーク国校に通う一学生なのである。



―カランカラーン。カランカラーン。
建物中に広がる大きな鐘の音は、その一日の始まりを示していた。
「お、おはようございます!」
荒い呼吸で教室に滑り込む生徒が一人。バストゥークの国紋が胸に刺繍された藍色の制服と、同色の膝上丈のプリーツスカートを着こなし、左の手に鞄を持っている。
肩を上下に揺らし、ぜぇぜぇと息をつく。普段の位置から少し横にずらし髪を結んだユミだ。
しかし、既に時は遅く朝礼は始まっていた。
「おはようございますユミさん。遅刻ですよ?」
スタン先生はエルヴァーン族の男。
少し下げてかけた小さな眼鏡の奥に、鋭くユミを見つめる瞳がある。
「ご、ごめんなさい。」
ユミは慌てて謝ると、急々と自分の席に着いた。
(はぁ…。)
本日二度目のため息である。
「(おはようユミ。遅刻なんて珍しいね?)」
それに気づいた隣の席の子が、ひそひそと声をかけてきた。
ユミははっとして横を向く。
声をかけてきたのはミスラ族の女。大きな猫耳に美しい毛並みの、いわば猫女だ。
名をキヨという。
「(あ、おはようキヨ。ちょっと色々あってね…。)」
「(色々ぉ?)」
キヨは耳をピンッとさせた。
いつでもどうぞ。まさにそう言わんばかりだ。
キヨとユミは幼い頃からの親友で、いつもお互いの相談にのってきた仲である。
家庭、学校、勉強に恋愛まで。ジャンルを問わず、全てを話せる相手だった。
そして、このキヨのポーズはお決まりで、ユミは今まで何でも話してきた。
「(えと…。)」
しかし、今回ばかりは例外である。
あまりにも現実からかけ離れた話だ。
世界の終わり。闇の契約。闇の使い。謎の女。
どれをとって話そうと、まったく伝わる自信がない。
そう、まだ自分自身確信しきれていない部分が多すぎる。
「(…ありゃ?)」
キヨは黙り込んでしまったユミを見て、不思議な顔をした。
「(ごめん。今回のはまだ、整理できてないや…。)」
ユミは俯いて小さくなってしまった。
それを見て、キヨが優しく微笑む。
「(そっか。話したくなったら言ってね。)」
そう言って、教卓にいるスタン先生の方を向き直した。
(うん。ありがとう。)
心の中で、ユミは精一杯のお礼をした。



―カランカラーン。カランカラーン。
国校の鐘の音はバストゥーク全体に広がっていた。空を抜けるようにどこまでも美しく…。
その鐘が鳴り止むか否かの時、一人のタルタル族の男がバストゥークの地へと訪れていた。
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