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第玖輪 透かされし心
2008-06-22 Sun 23:19
「お待たせしました。こちらガルカンソーセージとイエローカレーです」
料理が盛られた皿が机の上に並べられた。ジルが頼んでいたメインディッシュだ。
店員が慣れた手つきで空いている皿を下げ「ごゆっくりどうぞ」と軽く頭を下げて去っていく。
ジルがそれに「どーも」と軽く答えていた。
そして何もなかったように、たった今運ばれてきた料理をつつき始める。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ユミは声を上げた。また危うく流されるところだった。
今度はそうさせまいと身を乗り出してジルの視界に入り込もうとした。
「ん?」
しかしジルは相変わらずのマイペースで、ユミの行動などまったく気にしていない。
ユミは少し苛立ちを覚え始めていた。
「どうしてですか?」
苛立ちで声が微かに震える。
「…セイレーン?」
それでもジルはしらをきるつもりなのか、話を元に戻そうとした。
少し上目遣いにユミを見つめている。その表情は悪戯な子供のよう・・・。
馬鹿にされたような気分になってユミはついに身の内を爆発させた。
「とぼけないでください!」
ドン!
爆発の勢いに任せて机を両の手で叩いていた。

シーン――

お決まりの展開だ。
店内の誰もが動きを止めてユミを見つめている。 店主も心配そうな顔をしてこちらの様子を窺っていた。
ユミは自分に視線が集まるのを感じる。
そしてハッとして我に返り頬を赤らめながら「ごめんなさい」と言って席についた。

店内の時が元に戻る。ざわつきが戻り飲食を再開する音が交じり合う。
一瞬うつむいたユミだったが、憤怒の気持ちはおさまらず顔を上げてジルにさらに突っ込んだ。
「どうして私の名前を知ってるんですか!」
声は静かだが目が本気だ。
その目をみてジルが少しだけ分が悪そうな顔をした。
しかしそれもつかの間、またすぐに手に持っていたフォークで料理をつっつき出
した。
「うーん」
その先でつついている物を食べるわけでもなく皿の上で遊ばせている。
クルクルクルとガルカンソーセージが踊る。
しばらくするとジルはその手を止め、急に真面目な顔をしてユミを見つめた。
全く視線を逸らさない。その瞳の奥からは完全に茶目っ気が消えていた。
しばしの間を置いてジルはようやくその口を開く。

「知ってるのは名前だけじゃない」

その声は今まで聞いたことのないトーンだった。
ユミは目を丸くした。
ジルは尚も続ける。
「君がどうして俺をつけてきたのかも、俺に何を聞きたがっているのかも分かっ
てる」
そこまで言うとフォークの先で遊ばせていたガルカンソーセージをプスっと刺した。
そしてそれを食べやすい大きさに切って、ゆっくり口の中へ運ぶ。
「…どうして…」
ユミは愕然とした。 まるで心をのぞかれているようだだ。
もしかしたら本当に恐れるべきはあのガルカではなくこの人だったのか…?
ユミは自身の中に浮かんだ疑惑に身震いをした。
「まぁ…」
まるでユミがそう悟るのをわかっていたかのように、ジルは声のトーンを元に戻
す。
「俺は何も隠すつもりはないから、とりあえず落ち着いて」
宥めるような声だった。
ユミは少なからず敵対する相手ではないことを感じた。
ふぅと一息つくと気持ちを落ち着けた。
それを見届けたジルは食べる事を止め、ゆっくりとした口調で全てを話し始めた。
「まず、君の名前を知ってる事だけど」
コクッ。 ユミが静かに頷く。
「俺にはちょっと特殊な能力があってね」
特殊な能力? ユミはいまいちピンとこなかった。
能力とは魔法とは違う類なのだろうか?
魔法とはこの地に存在する八つの大気の元素を、強めたり弱めたりすることで発生する力の事である。
しかしジルはおそらくユミの心を読んでいる。というより見透かしている?
その力は大気が関連しているようにはとても思えなかった。
ジルの言葉が続く。

「”透心”ができるんだ」

やはり。ユミは何故か容易に納得することができた。
ジルもそれを読んでいたのか感じ取ったのか、さほど驚かないユミにお構いなしに続けた。
「簡単に言ってしまえば、人の心を読み取る事ができる。だから君の名前や俺をつけてきた理由も何を聞きたがっているのかもわかるって事」
そこまで話すとジルはユミをじっと見つめた。
その真っ直ぐな眼差しにユミは少しだけたじろいでしまった。
ジルが不意に人差し指を立てる。
「ずばり・・」
何がずばりなのかよくわからなかったが、ユミには話を遮る理由もなかったのでそのまま聞くことにした。
「君が俺をつけてきたのは、俺が黒いローブを着た女?・・に見えたからだろ?」
女の部分を少し濁したのが気になったが、ユミは「そうです」と頷いた。
「ふむ・・・。まぁその女の話は後で詳しく話すとして、まずはさっき俺が何をやったのか・・・それを話すよ」
後で話す・・?という事は本人ではないがその女についてこの人は何か知っているのだろうか?
ユミは連日感じていた謎への解決の糸口が見つかったような気がした。
「ん・・・それが聞きたい事じゃなかったか?」
「あ、いえ、お願い・・します」
ユミは慌てて答えた。今のもやはり”透心”されたんだろうか。
迂闊に他の事を考えるのをやめた方がいいな。ユミはそう心の中で思った。
「お・・・そうだ」
またさらにそれを”透心”したのか。ジルはおもむろに自分のローブのポケットをあさり始めた。
そしてポケットの中から一枚の古びた硬貨を取り出すと、それをユミに差し出しながら言った。
「これを渡しておく」
ユミは硬貨を受け取るとまじまじと見つめた。銀色の硬貨だがところどころ錆が浮いている。表裏何か文字のようなものが記されているようだがかなり磨耗していて読み取れない。
「なんですかこれ?」
「透心傍受」
ジルは間髪いれずあっさり答えた。
「へ?」
ユミはその答えに思わず変な声をだしてしまった。
「ほらフェアーじゃないだろ。話し合いにはさ」
確かに。ずっと心を覗かれたままでは、そのなんというか・・・居心地が悪い。しかし・・・
「・・こんなので効果あるんですか?」
そう、見た目はただの硬貨なのだ。そんな人の心を見透かすような能力に対して満足な効果が得られるとは到底思えなかった。
「あるよ。それ特殊な錬金術で合成してあるから」
「はぁ・・」
いまいち納得できる説明ではなかったが、ユミはその硬貨をぎゅっと握り締めた。
「いや・・別にそんな力込めなくても大丈夫なんだけどなぁ」
少し悲しそうな顔をしてジルはつぶやいた。
「あ、ごめんなさい・・・」
ジルからすればその行為は自分を避けているような感じなのかもしれない。
そう思ったユミは手を少し緩めた。

「よし、アンフェアーじゃなくなった所で話を戻そう」
ジルの仕切りなおしの声はすっかり破天荒な調子に戻っていた。
「…はい」
ユミも致し方なくそれに付き合う。
「さっきのガルカを倒したのも原理は”透心”。それプラス侵食行為でノックアウト」
いきなりだ。説明が簡単・・適当すぎる。
「・・ごめんなさい。全然わからないです」
わかるわけがない。ユミは謝ってしまった自分に少し後悔した。
「むむ・・だから人の心にはね、必ず弱い部分があるわけよ」
「弱い部分・・」
「簡単に言うと表に出せないようなネガティブな部分。君にもあるだろ? 人には言えないような悩みとかさ」
「あぁ、はい」
そこまで言われてユミはようやく理解することができた。
「そこを見つけ出して精神的打撃を与える」
精神打撃・・・?心を攻撃するなどピンとこないユミは思わず首をひねってしまった。
「あのガルカの場合。ヒュムにつけられた名前がひどいものだったらしくてその事をずっと隠して生きてきたみたいだな」
坦々と話すジルだが、聞き手のユミには謎がどんどん増えていく。
「あの、そこを攻撃?・・しただけであんな風になっちゃうものなんですか」
ユミは率直な疑問を述べた。
「人の心の傷というのは人それぞれさ。名前なんて気にしていないガルカだっていれば、やつみたいに心底嫌がったやつもいるんだろう」
なるほど。完全に理解できたわけではないがそう言われれば何となく納得できる。
一つ謎が解決したところでユミは更に踏み込んだ。
「・・その攻撃は誰にでもできるんですか?」
「んーまぁ基本的にはね。だけどできないやつもいるよ」
ジルは少し困った顔をした。どうしてだろう・・・こういう顔をすると妙に幼く見える。
まぁ元々タルタル族は歳を重ねても見た目は大して変わらないのだけれど・・・。
「心を鍛えてるやつはダメ。ノイズが多すぎて見えない」
「ノイズ・・?」
聞きなれない単語だった。
「簡単に言うなら雑念かな。見たい部分に砂嵐のようなビジョンが重なって見えないんだ。で、君がぎゅっと握ってるその硬貨にはノイズが沢山でるように合成してある」
「だから傍受・・・」
ユミは握り締めている硬貨をチラっと見た。相変わらずそんな効果があるようには見えないけど。
「そそ、だから君にもできない。・・・あとは外にいるこわーい獣人かな」
「獣人・・ですか」
「うむ・・あいつらは創造主が違うから」
創造主?ユミは首をかしげた。
確かにユミやジルなどタルタル族を含む他の種族達はアルタナの女神より産まれたとされていた。
そしてそのアルタナの民と対等するように産まれたのが獣人。獣人はプロマシア男神が創造したのだとか。
しかしその創造主の違いがジルの能力となんの関係があるのか?
ユミはどうもジルがまだ何かを隠しているような気がして仕方なかった。
「あぁちなみにねぇ。この侵食行為は一回使うとものすごーーーく体力を消耗するから、大人数には対応できません」
ジルはブブーと体の前で両手をばってんに組んで見せた。しばしの間を置いてユミはようやくその意味に気がつく。
「あ! だから・・・」
机に並べられた多数の料理はその代償なのだ。
「そ、腹がへるのよ・・めちゃめちゃね」

グーーー。

ジルがそういい終わるか否のタイミングで空腹のサインを示す音が聞こえた。
「今のは俺じゃないな」
ジルが自分の腹を押さえながら言う。ユミを向き直ると恥ずかしそうに腹を押さえていた。
「おまたせしました」
ちょうどその時ユミの頼んだ料理を持って店員が机の前にやってきた。
慣れた手つきで配膳を済ますと、また「ごゆっくりどうぞ」といって去っていった。
「腹へってんだったら。続きは食べながら話そうか」
いつの間にかジルは両手にナイフとフォークを持って構えている。
そういえば、とうの前に運ばれてきたジルの料理はろくに手をつけていないままだっけ。
無我夢中で料理にがっついていた理由がわかった今、ユミにはジルを制止する事などできるわけがなく、ジルの意見に賛同した。
「・・はい」

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第捌輪 セイレーンの涙
2008-06-02 Mon 00:06
「あのぉ・・・」
ユミは困り果てていた。
目の前で料理にがっついている男に話しかけるタイミングを完全に失っている。
「すみません」
ユミはもう一度試みた。
「・・・ん?」
男は一瞬手を止めて顔を持ち上げた。膨らんだ頬をモグモグと動かしている。
そして眉をへの字に曲げたユミを見つめると少し照れながら言った。
「あぁ、わふいわふい。ひにひないでなんでもふきなのらのんひゃって」
口の中に食べ物を入れているせいでいまいち何を言っているかわからなかったが、おそらく好きなものを頼めと言ったんだろうとユミは悟った。
男はそれだけ言うとまた料理にがっつきだした。
(ふぅ・・・)
ユミは思わずため息を漏らす。

ここはバストゥークの港区にある「蒸気の羊」亭という酒場。
鉱山区のガルカ族の居住区から逃げ出した二人は、しばらく身を隠す為この場所を訪れていた。
ヒュームを極端に嫌い接触を避けている彼らだ。ヒュームの経営する店こそ近づきにくい場所だろうと男は言っていた。
店の中はそんなに広くないが仕事帰りや夕食目的の人々で賑わっている。
中央奥のカウンター内で忙しそうに一階と二階を行き来しているご婦人がこの店の主人。
不慣れな帳簿や仕入れの為お客の相手ができていないといつも気にかけていた。
それもそのはず、酒場という名こそついているがメニューが豊富で普通に食事できる食事処でもあるからだ。
その為食材の仕入れ量は半端ではない。
ユミは母と良く来る馴染み深い店だったので主人とは面識があった。
いつもユミと母が訪れると笑顔で迎えてくれる。今日も笑顔で迎えはしてくれたものの・・・
今日一緒にいるのは母ではなく通りすがりの救世主・・・といっていいのだろうか?
見慣れないお客に主人は一瞬不思議な顔をしたが、すぐに「ゆっくりしていってくださいね」と優しい声をかけてくれた。
ユミが少し主人と話し込んでいると男はそそくさと席につき料理をオーダー。
ユミが主人と別れ席に着く頃には男の前には簡単な料理が並び、すでに料理に夢中だった。
何度か話しかけようと思ったが、なんだかあまりにも必死になって食べているので悪い気がして声をかけられなかった。
そして結局つい先刻起こった出来事を何一つ聞けていないまま現在に至る。

このままではラチがあかない。そう思いユミもとりあえず何か頼むことした。
普通なら、きっとさっき起きた出来事のせいで食欲もないくらい怯えていただろう。
しかし男のあまりに破天荒な行動に気が緩んで、ユミは少しお腹がすいていた。
それに・・・今日はどの道誰も家にいないのだ。ここで夕食を済ませるのが利口だろう。
「すみませーん」
ユミは軽く手を上げて近くにいた店員を呼んだ。
「あ、はーい」
威勢のいい声と共に一人の店員が駆け寄ってくる。
「カルボナーラください」
主人曰く最近新しく始めた麺という食材を用いた料理らしい。ユミは前に来たときに食べたことがあり大変気に入っていた。
「はい、カルボナーラですね。ありがとうございます」
オーダーを受けると店員はパタパタと音を立てて厨房の方へと去っていった。
それを見送るとユミは視点を正面に戻した。目前の男は相変わらずムシャムシャと音をたてて机に並べられた料理を貪り食っていた。
(すごい食欲…)
男にあっけにとられているとその向こう側、店の端で連れを相手に何やら熱弁をしている男が見える。
セイレーンがどうとか・・・。
ここからではよく聞こえないが身振りがかなりオーバーなので思わず見入ってし
まった。
「セイレーンの涙か」
「え?」
突然声をかけられユミは視点を戻した。
目の前で料理にがっついていたはずの男がユミを見つめている。
「知ってるか?」
男の質問は唐突だ。
「え、何をです?」
ユミは突然の質問に一瞬うろたえたが何とか応えた。
「セイレーン」
「セイレーン・・・ですか」
まったく知らないわけではない。しかし学校で習った知識などどれほど通用するのか、ユミにはいまいち自信がなかった。
「学校で・・・遥か昔に存在した召喚獣だという事くらいしか」
「ふーむ」
やっぱりといった反応だった。
男は指を顎に当てて悩ましげなポーズをとっている。
そしておもむろに口を開く。
「セイレーンはかつてこの大地をおさめていた神々の一人だったそうな」
(そうなって・・・)
この人は一体いくつなんだろう。ユミの頭はセイレーンの事より目の前にいるこ
の男の正体のほうが気になって仕方なかった。
「で、セイレーンは優しさを司る神様で、アルタナの民が誕生した時、他人を思いやる心
を与えたんだとさ」
(だとさ・・・)
変な語尾をつけるのが流行なのだろうか・・・ユミはますます男の事がわからなくなった。
「ところが・・・」
男が突然話すのをやめた。
急にピタッと動かなくなってしまったのだ。
「あ、あのぉ?」
ユミは慌てた。
まるでさっき鉱山区で見たガルカのように動かない。
瞬きもせず口を開いたまま静止している。
ユミは体を揺すろうと身を乗り出し男に手を伸ばそうとした時・・・
「そういえば」
ビク!
突然男は我に返った。
ユミは不意をつかれ机の上で倒れそうになる。
机が目前に迫ったところで何とか体制を持ち直した。
「なんですか?」
そういいながら、ユミはゆっくり椅子にすわり直す。
それを見届けた男が少しの間をあけて続けた。
「自己紹介したっけ?」
「な・・・?!」
ユミは完全に呆気にとられた。
予想もしなかった言葉に口をポカーンと開けてしまった。
しかし男は至って真面目なようだ。
また指を顎に当てて頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「まだだったよね?」
男にそう言われユミはハッとした。
「あ、え、はい。まだですね」
何だか変な汗が出てきた。
この人はどこまでマイペースなのだろう。
まともに付き合っていたらこっちが疲れてしまいそうだ。
ユミは自分で平常心を保つ努力をした。
男が続ける。
「俺はジル。ジルライト・マジター。よろしく」
ジルは身を乗り出して小さな手を差し出して来た。
「あ、はい。」
ユミも同じく身を乗り出して握手に応じる。
こうしないとタルタル同士ではヒューム基準で作られた机の上では手が届かないのだ。
「あの、私は・・・」
ユミも自分の紹介をしようと口を開いた。
すると突然それにかぶせるようにジルが口を開く。
「ユミ・・だろ?」

ユミは硬直した。そしてこの人の前では、平常心を保つなど無理な事だとまざまざと思い知らされるのだった。
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