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第拾壱輪 擬態ガルカ
2008-08-22 Fri 22:27
どうしてこうなってしまったのか・・・。
もっと早くに引き返せばよかったとユミは独り言ちていた。
現在ユミが恐る恐る歩を進めているのは、つい先刻逃げてきたばかりのガルカの居住区だ。
ユミの前を歩くもう一人の人物。同じ種族タルタル、ジルがいる。
二人は寸分の隙間なくくっついて歩いていた。
なぜそんなに密着する必要があるのか。それは、こうしていないと怪しまれてしまうからだ
「(ジルさん、いつまでこうしてればいいんですか?)」
ユミがジルの耳元で囁いた。
「(ん・・・着くまで)」
(はぁ・・・)
聞くんじゃなかった。
ユミは深くため息をついた。
「(おい!動くなって)」
「(ご、ごめんなさい)」
この作戦を説明された時、絶対に歩く以外の行動をとるなと言われていた。
もっぱらあまり気が進むような作戦ではなかったが、他に方法がないと言われ致し方なく賛成してしまった。
よく考えればもっと他に良い案があったろうに・・・。
この作戦はその・・・あまり頭が良い感じではない。
ジルに説明された作戦はこうだ。
ジルが着ているローブを二人で被り、ガルカの子供に成りすます
思い返せば思い返すほど賛成してしまった自分を後悔してしまう。
見てくれは決してガルカと言えるものではない。
しかしジルの能力をフルに活用し、道中出会うガルカ自身に暗示をかける事によりそれらしく見せている…らしい。
ジルの熱のこもった解説を思い返しながらも、頭上にある紙で作ったガルカの顔が本物に見えるとは到底思えなかった。

そもそも何故二人がここにまた舞い戻る事になったのか…。
すべてはジルの正体を聞いたときから始まっていた


――――――――――――――――――


あれ? いってなかったっけ?

ジルが真顔で答えた。
「な・・・」
ユミはその返答にあんぐり口を開けてしまった。
ジルが髪をくしゃくしゃとかきながら言う。
「いや、わるい。あまりにどたばたしてたからさ」
「は、はぁ・・・」
確かにジルとユミが出会ってから怒涛の展開だった。
何を話して何を話していないかわからなくなるのも無理はない。

コホン。

ジルが間をとるように一つ咳払いをした。
「えーご紹介預かりましたわたくしぃ」
(預けてないし・・・)
突っ込みたい気持ちを抑えながらジルの演説につきあった。
「ジルライト・マジターと申します。ジルとよんでくれぇ」
「いや、それは知ってます・・・」
「む・・・」
(はぁ、これは真面目に付き合ってたらこっちが疲れちゃうな)
「えーっと・・・?」
ジルが真面目に困った顔をしている。
ユミがすかさず補正を加えた。
ジルさんは何をなさってる方なのですか?
改まった言い方をするほどの相手ではないが、あえてかしこまった言い方をすることでユミはジルに逃げ場のないよう仕掛けた。
「あぁ、お仕事ってやつね?」
それでもおちゃらけた口調は変わらない。
ユミはその次の言葉がでるまでじっと耐えた。
「えっとねぇ、ひじょーに解答に困るんだけど。・・・俺も同じかな?」
(同じ?)
また主語がない。じっとジルを細目で見つめる。
「モーグリと」
「モーグリ?」
「そ。俺も放浪の身ってことさ
「・・放浪・・・ですか」
なんだか結局逃げられた気がしてユミは悔しかった。
しかしそのあとに続く言葉はなく、もうこれ以上の追求は無駄だと悟った。
それなら・・・
ジルさんは何故バスに来られたんですか? 放浪の旅人なら定住してはいないんですよね?
ユミは質問の方向を変えた。
後者には「ここに住んでる」と言わせない意図が込められている。
そうでなくても、服装やバストゥーク国民なら誰しもが近づきたがらないガルカの居住区にいた事を考えれば、定住者ではないのは一目瞭然なわけだが。
「んー。鋭いねぃ」
流石にふざけた態度は消えたようだ。
唇を結び真面目な表情でユミを見つめている。そして観念したようにその口をゆっくり開いた。
「わかったよ。君には隠し事はできないみたいだ」
「お願いします」
ホッとユミは心の中でひとつ息を吐いた。
察しの通り俺はこの国の民じゃない。さっきも行ったけど留まる場所を持たない放浪者だ
「はい」
ユミが一つ相槌をうつ。
「俺がここに来たのは・・・その・・ある物を探しにね
「ある物?」
「あぁ、ある物さ・・だけどそれはなかったんだ
「ちょっと待ってください。ある物ってなんですか?」
このパターンは以前にもあった。このまま放置しておくと流されてしまう。
「まぁまぁそれはまた後で話すから、とりあえず続きを聞いておくれ」
「はぁ・・・」
ジルに宥められる形でユミは引き下がった。
「んで、俺はそれを作った主を訪ねようと思ったわけさ
「・・はい」
なんだか話が見えてこないが、ここは一つ我慢だ。
ユミはグッと心の奥に募る気持ちを抑えた。
「そいつは鉱山区に住んでてね・・・」
(鉱山区?)
ユミは何かが繋がったような気がした。そしてハッとする。
「あ!」
ユミが気付くのを待っていたかのようにジルは口の端を持ち上げて言った。
「そう、その主に会いに行く途中に君に跡をつけられたってことさ
「あぅぅ」
ユミは何だか恥ずかしい気分になった。
まさか自分の勘違いで起こした行為に繋がるとは思っていなかった。
ユミは両手で顔を覆って下を向いてしまった。
「まぁまぁ、この出会いにはきっと何か意味があるんだ。そんなに落ち込むなって」
ジルがそう言ってくれたので、ユミはなんとか顔を持ち上げることができた。
「で、話を戻すけど俺はこれからそいつに会いに行こうと思うんだ」
「え・・今からですか?」
もうすっかり日は沈み、皆が夕餉を楽しんでいる時間だ。
しかも向かうはあの鉱山区・・・そう考えただけユミは身がすくんでしまった。
ユミが数刻前に起こった出来事を思い返していると、ジルがとんでもないことを提案してきた。
「君も一緒にどうだぃ?」
「へ?」
(なんで?)頭の中にはクエスチョンマークが無数に浮かんだ。
だがそんなことはお構いなしにとジルは続ける。
「ある物がなんなのか知りたくないのか?」
「・・それは、知りたいですけど」
「何か問題でも?」
「いや・・だってあの場所にもう一度行くんですよね?」
「そうだよ」
ジルはあっさり答えた。
この人には恐怖心というものがないのだろうか?
ユミが頭の中で迷っているとジルが手をパタパタさせながら言ってきた。
「あぁ、ガルカか。大丈夫大丈夫、良い作戦があるから


――――――――――――――――――


その良い作戦がこの『ガルカの子供に成りすます作戦』。
(はぁ・・)
あまりのやるせなさにユミは再び深いため息をついてしまった。
するとジルが突然歩くのを止め、急停止をかけた。
どん!
(いったぁ・・・)
その勢いでユミはジルの後頭部に鼻をぶつけてしまった。
「(ど・・どうしたんですか?)」
ユミが鼻を摩りながらジルにヒソヒソ声で問うた。
「(し! やつらがいる)」
ユミの場所からは何も見ることができない。
前にはジルの頭。周りはローブで完全に塞がれている。
見えない「やつら」がなんなのかわからないまま、ユミはジルの次の言葉を待った。
「(いいか。絶対おかしな行動はとるなよ?)」
ジルが再度確認してくる。
ユミはそれに軽く相槌を打つことで答えた。
そして再び二人は歩き出す。

コツコツコツ・・・

十歩くらい歩くと誰かの話し声が聞こえてきた。
何を話しているかはわからない。
しかしそれはさらに歩を進める事で鮮明になっていった。

コツコツコツ・・・

「おい!まだ見つからぬか!」
怒鳴っている声が一つ。声のトーンからいって相当怒っているようだ。
おそらく先刻ジルが倒した大型のガルカだろう。
「もうここにはいない!いい加減あきらめろ!」
それに答える声が一つ。こちらも相当熱が上がっているようだ。
「ち・・やつら今度会ったらただじゃおかぬ」
(やつら・・きっと私たちの事だ)
今見つかったら・・きっと殺される。
そんな事を思いながらいよいよ彼らの横を通り抜ける所だった。
その時だ。
「おい!待て!」
心臓がひとつはねる。一つの声に呼び止められてしまった。
ジルがそれに合わせて体を横に向ける。
ユミも慌ててあわせる様に後ろへ回った。
「貴殿、どこのものだ?」
「・・・・・・」
その呼びかけにジルは何もこたえようとしない。
後からでは何も見えないのでわからないが、何かを念じているように見える。
ユミは自分の心臓の音がうるさくて気が気ではなかった。
しばらくするとジルが何も発していないのに、ガルカは一人会話を続けた。
「・・そうか、見つかるとよいな。行ってよいぞ」
そう言われてジルが歩き始めたのでユミもそれに続いた。

しばらく歩いたところでユミは声を潜めてジルに問うた。
「(何かしたんですか?)」
「(いやなにも?)」
これが暗示というやつなのだろうか?
少なくともユミにはこの擬態ガルカの声は聞こえなかった。
しかしあのガルカは確かにこの擬態ガルカと会話をしていた。
ユミは初めてジルの作戦はおちおち失敗ではなかったと思った。
が、それも束の間。しばらく行くとまたガルカの人だかりに遭遇する。
今度は少し数が多い。
ジルが慎重に人々の隙間をすり抜けていく。
「あっちのガルカは・・」とか「ヒュムどもは・・」とか「ヒュムに手なずけられた愚か者・・」とか、そんな罵声が聞こえてくる。
ここに住んでいる人々は相当恨みを募らせているようだ。
ここは一刻も早く退避したい場所だ。ユミはそう思いながら自然と歩くスピードを上げていた。
しかし、それがまずかった・・。
歩調を狂わせたユミの足は見事にジルの足を踏んだ。
「(おわっ!)」
ジルは声を押し殺してなんとか体制を持ち直そうとした。
しかし、無駄だった。
どーん!
努力空しく大転倒。二人は見事にローブからはみ出し、その姿をガルカ達の前に露にしていた。
「・・な!」
その場に居合わせたガルカ達が一斉にこちらを振り向く。
みるみるうちにガルカ達の表情が変わっていった。
そして一人が空に向かって吼えた。
「やつらだ!やつらがいたぞ!!」
「ちっ!」
ジルが咄嗟に起き上がるとユミの手をひいて叫んだ。
「走れ!!」
ユミはもう泣きそうだ。何がどうなったのかわからない。完全にパニック状態に陥っていた。
ジルの手を何とか離さない事だけで精一杯だった。
震える全身をなんとか起こすとやっと足を前に踏み出せた。
「にがさん!」
そこへ一人のガルカが襲い掛かる。大きな手を広げユミに迫った。
ジルがすかさず前に出る。
そして、片手をかざすと目を大きく見開いた。
「ぐあ・・」
ガルカがズシンという音を立てて地面に倒れた。
しかしまだ後手が迫ってくる。
ジルは振り返ると再びユミに叫んだ。
「ユミ!行くぞ走れ!」
ユミは走った。無我夢中で。道中何が起きたかなど覚えていない。
ただ前を走るジルの手を握り両足を精一杯動かす事で必死だった。


どれくらい走っただろう。
ジルが突然建物の影に隠れた。ユミもその後を追う。
「はぁ・・はぁ・・とりあえず・・大丈夫だろう・・」
息をきらしながらジルが言う。
ユミの手を離すと壁にもたれかけるように座り込んでしまった。
ユミもその場に座り込んだ。
「はぁ・・ご、ごめんなさい・・」
息も絶え絶え、自分のせいでこうなってしまった事をユミは悔やんだ。
その言葉にジルは手を上げて答えた。
「いや・・いいんだ・・おかげで予定より・・はやく着いたしね・・」
「・・え? 着いた・・?」
ジルは上げた片手で今入ってきた通りとは反対の方向を指差した。
暗くてよく見えないが、なにやら白いものが浮いている
「はぁ・・・ふぅ・・落ち着いた?」
ジルがユミに問う。
「あ・・はい」
呼吸もようやく整い出し二人は重い腰を上げた。
ジルが指差した方向へゆっくり歩き始める。
ここは家と家の間だろうか。狭くて月の光もあまり届かない。
それでも目を凝らせばなんとか道は見える。
地面にはあちこちに残骸が散らばり、ここがいかに廃れた場所なのかがわかる。
ふさわしい言葉を捜すならまさしく廃墟だろう。
残骸に目を奪われていると、いつのまにか目の前に大きな壁が現れた
首を90度近く曲げなければ天辺が見えない。
「行き止まり・・?」
ユミが独り言ちた。
「いや、そうじゃない」
ジルがそういうと徐に自分達のすぐ頭上を指差した。
ユミがそれにつられて後ずさりしながら視界を移動させる。
下を向いて歩いていたせいでまったく気付かなかった。遠くから見えた白いものはこれだったんだ。
家と家を結ぶ一本のロープ。それにかかる大量の服のようなもの。この廃墟には似つかわしくない純白・・・

洗濯・・物・・・?

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