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第拾弐輪 ホワイトアウト
2008-09-14 Sun 22:50
しくたんせ ますりか

さっきから何度もその言葉を繰り返し、頭を悩ませている。
一体何のまじないだろう。 ユミにはとんと検討がつかなかった。
もっぱらこの人が考える事など他の誰であっても理解に苦しむだろうけど・・・。
そんな事を考えながらユミはジルの様子をただ見守っていた。
「何をしてるんですか?」と聞きたいところだが、おそらく今の彼には他人の声は届かない・・・だろう。
ユミにはなんとなくそんな気がしていた。

「うーん」
ジルが唸り声を上げながらうろうろしている。
しばらく歩いていると突然動きを止め頭上を見上げる。
そんな一連の動作を何度も繰り返していた。
今ユミ達がいる場所は家と家の間。
そんなに広い場所ではないが、道幅はタルタルで十歩くらいの距離がある。
一方は大通りへと連なる道。もう一方は大きな壁が立ち塞がり完全に道を塞いでいる。
その壁から十歩程後退りをして頭上を見上げる。そこには両家屋の二階にあたる部分からロープらしきものが渡されており、そこに複数の洗濯物がかけられていた。
一定の幅を保って一、二、三、四、五枚の純白の服がかかる。
その同じ組のロープが同じ高さで横ばいにさらに九本はられていた。
まるで整列した兵士のように寸分のくるいもなく並んでいる。
ジルの奇妙な行動とこの洗濯物の配置に、ユミは何か意味がある事に気が付いていた
これは何かのトラップなんだろうか。あるいはギミックか・・・。
いづれにせよユミにわかるのはそこまでだ。
その先はさっきから一人頭を悩ますジルのみぞ知る。
「よし、たぶんここだ」
ジルが一枚の洗濯物を見上げながら言う。
そして首をそのままにユミを呼びつけた。
「ユミ」
「あ、え、はぃ?」
ジルが不意に呼んだのでユミは変に焦ってしまった。 一人であたふたしてしまう。
もしかしたらもしかするかもしれないから下がってて
(もしかしたらもしかするかも?)
なんのことやら。ユミは理解するより前に体を動かしていた。
ジルの「もしかしたら」は何だかものすごく嫌な予感がするから。
ユミはジルの傍から離れる途中ふと思った。
(そういえば・・ジルさんはいつから私の事を名前で呼ぶようになったんだろう)
そんな事を思いながらユミはジルが立っている位置より二十歩程離れ、ジッと様子を伺った。
(まぁ、悪い人じゃなさそうだからいいけど・・)
本人に尋ねた所で答えなど返ってこないだろう。ユミはあっさり自己完結で終わらせることにした。

ユミが様子を伺っている先でジルがゆっくり目を閉じた。
胸の前に両手で印を組み始める。まるで魔道士が魔法を唱えるような形だ。
そして唇を微かに動かし何やら唱えてるように見える。
本当に魔法?
そう思っているとジルの足元に魔法陣が現れた。
大きく円を描きその輪郭をたどるようにして文字が現れる。あたりには緩やかな風が流れだした。
ジルの作り出した魔法陣は初め小さな光を放っていたが、ジルが詠昌を進めるにつれて強い光を放っていった。
そして詠昌が完成する。 ジルが目を見開き両の手を広げた。
拡がれ翼よ!(レビテト)
聞いた事のない魔法だった。 少なからずユミが通う国校では習った事はない。
初見の魔法にユミは心奪われた。

ジルが放った魔法が形となって現れる。
淡い白色の霧がジルの足元へと集結し、時計回りに渦を巻くようにして回転を始めた。
次第に集結する霧は濃度を増し、回転の速度を速める。
その動作と同時にユミは自分の視点が徐々に上がっていくのに気が付いた。
「すごい・・・」
ユミが視線を送っている先で、なんと、ジルが宙に浮いている
ジルの足が地から離れると、渦を巻いていた霧が形を変えた。
左右に対照となる形をなして広がる。それはやがて鳥の翼を模した形へと変化していった。
まるで翼の生えた台座だ。
ジルはまさにその台座の上に乗っている。
翼へと姿を変えた霧は更に濃度を増し、やがて輪郭あるものへと変わった。
光で作られた翼。そう呼ぶのが相応しいだろう。
光の翼に乗ったジルは徐々に高度を上げ一枚の洗濯物へと近づいていった。
そしておもむろに自分のローブの胸元あたりをまさぐると、小さな棒のような物を取り出した。
(なんだろう?)
ユミが地上から見上げながら思っているとジルがとんでもない行動に出た。
片手に持った棒らしきもので洗濯物を滅多打ちにしている。
「な、なにやってるんですか!」
ユミは思わず叫んでしまった。
普段家事をしている彼女にとってその行為は見過ごせるものではない。
しかしジルは相変わらずなマイペースだ。
振り向きもせず黙々と滅多打ちを続けている。
よく見るとその滅多打ちにしている部分に何やら黒い染みのようなものが浮かんでいる。
あれはペンだ。ユミは心の中で確信した。
ジルがペンを片手に純白の洗濯物に落書きをしている
「ジルさん!聞こえてますか!?」
いつの間にかユミはジルのすぐ側まで歩み寄っていた。
すぐ真下に近い場所まできて、ジルがようやくユミの声に反応をしめした。
「ん?いいからさがってなって」
洗濯物に落書きをしている手とは反対の手でシッシッとユミをあしらった。
ユミは致し方なく後退りする。
ユミがまた元の位置に戻るか否の時にジルの落書きは完成したようだ。
ジルがその場からゆっくり離れていく。
デタラメに書いていたように見えた落書き。それはよく見ると何かの魔法陣の一部のように見えた。ちょうど円形のケーキを一人分に切り取ったような形。
読めない文字を取り巻くように様々な模様が描かれている。
しばらく見つめているとその魔法陣は微かに光を放ち始めた。
魔法陣に目を奪われていると、いつの間にかジルが別の場所に移動していた。
そしてまた先程と同じ動作を繰り返している。
今度はユミは口を挟まない事にした。何となくだが今ジルはこの場所の鍵を開けようとしているのだ。
何処に繋がるのかもどうなるのかも全く分からないけれど・・・

そんな事を考えながらユミはジルが次々に描き出していく魔法陣の数を数えていた。

二つ三つ四つと順調に数を重ねていく。
時折手を止めて首をひねっている場面を何度か目にした。あれはおそらく思い出しているのだろう。
(そんなに頻繁にくるわけじゃないのかな)
ユミが詮索している合間にも魔法陣は次々に完成していく。

八つ目。そこまで完成した時だった。
ユミ達が向いている大きな壁側とは反対の方向から叫び声が上がった。
いたぞ!こっちだ!
それは先程ユミ達を追っていたガルカの声だ。
(見つかった!)
ユミはその声の主を見つけるより先にジルの方へと走り込んでいた。
「ジルさん急いでください!」
ユミは翼の台座の下で叫んだ。
ジルはもう九つ目を書き始めていた。
「コレが最後・・」
そう言いながら手を進める。
ユミは後ろを振り返った。物凄い形相のガルカ達が迫ってくる。
この狭い通路に大量のガルカ達。もうそれだけで恐ろしい威圧だ。
ユミは迫りくる巨漢に成す術もなくただ怯えた。
「よし!出来た!」
頭上で声が上がる。ジルが九つ目、最後の魔法陣を完成させていた
そして完成と同時に翼の台座から飛び降りるとユミの手をつかんで壁の方へと走りこんだ。
主を失った台座は霧のように消える。
壁に到達したジルは壁に背を向けピタリと張り付いて見せた。そして横目でユミに同じ格好をするよう促した。
ユミも慌てて同じ格好をした。
それを見届けたジルが落ち着いた口調で言う。
いいか?ここから先は特殊な世界だ
「え・・?」
ジルは目の前から迫ってくるガルカ達など眼中にない。
「絶対に俺から離れるな」
穏やかな声だ。ユミはその言葉を聞いて気持ちを落ち着けた。
「はい」
ユミが答えた瞬間。
目の前から迫りくるガルカ達の動きが止まった。
彼らが意図して止まっているわけではない。時間そのものがが止まった。音も臭いもなくなっている
ユミがその光景に目を奪われていると突然目の前を白いものが遮った。
頭上にかけられていた洗濯物が、一斉に落下した。全て同一のタイミングで綺麗に地に落ちたのだ。
しかしよくみると頭上にまだ残っている洗濯物がある。
ジルが魔法陣を描いたものだ。
それらはロープから離れ宙に浮かぶと、壁の方へと魔法陣を向け終結を始めた。
円を描くように並ぶ。やがて全ての魔法陣が繋がった。完全な円の完成だ。
魔法陣だけがその場に残り、洗濯物は地へ落ちる。
そしてユミ達の方へと魔法陣が近づいてきた。
ユミは少し不安になって横目でジルを見た。
だがジルに動じる様子はない。それどころか目を閉じている。
(大丈夫)
そう心に唱えながらユミも目を閉じた。
魔法陣がさらに近づく。
体が魔法陣に包まれていくのがわかる。そして何処からともなく風が吹き荒れた。
音のしない空間に徐々に音が生まれ、まるで風の中を音速で走り抜けるような轟音と化した。
耳がどうかなりそうだ。
ユミは自分の両手で耳を塞ごうとした。
しかし・・・
「え・・・」
ユミは自分の感覚を疑った。
自分の手が、動かない。それどころか体全体が動かない。
(どうして!?)
目を開けたがユミに見ることが許された視界は唯一。顔の向きさえ変えることができない。
動かせない体はまるでなにかに捕らわれている様。いやこれは壁の中へ取り込まれようとしているんだ。
ユミは徐々に自分の体が壁の中に埋まって行くのを感じた。
ひんやり冷たい感触が体全体を包み込む。もうユミに成す術はなかった。
「うぅ・・・」
喉の奥で声にならないうめきがあがる。
やがてその声さえも飲み込んでユミは完全に壁の中に取り込まれてしまった。





ホワイトアウト
そう呼ぶのが相応しいだろう。
ユミが壁に取り込まれた先にたどり着いたのは何もない世界だった。
本当に何もない。真っ白な空間にたった自分だけ、ユミだけが存在していた
(どこ・・だろう、ここ)
後ろを振り返ってみる。しかしそこに拡がるのはやはり真っ白な世界。
「誰か・・・」
ユミは言葉を発してみた。その言霊は音として空間に放たれると同時に文字となって現れた。
ユミの口元から「誰か」という言葉を表す文字が浮かび上がる。
しかしそれはユミに読める文字ではない。この世界で「誰か」という単語を示すプログラムだ。
ユミは自分から放たれた読めない文字をしばらく眺めた。 何とも不思議な光景だ。
やがて「誰か」を示す文字は地へと落ち、真っ白な地面に吸い込まれるようにして消えた。
そしてまた何もない世界に戻った。
ユミはふと自分の足元を見た。 自分の影がない。
こんなに真っ白な世界なのに光は存在しないという事なのか。
いやあるいはココは本当に特殊な世界なのかもしれない。
(特殊?)
ユミがハッとした。
その言葉を以前ユミに残した人物。
ジルがいない。
「ジルさん!」
ユミは叫んだ。その言葉はまた音となり形と化した。
今度は先程より遠く離れた場所に落ちた。そして吸い込まれるようにして消える。
また何もない世界に戻った。
だが、今度は思わぬ反応がかえってきた。
「ジル」を表すプログラムが落ちた場所が波をうっている。まるで水面のようだ。
「ジル」が落ちた地点を中心に円形の波紋が広がってゆく。
やがて波紋がおさまると中心にぽっかりと大きな穴が空いた。 人が楽々と通り抜けてしまうくらいの大きさだ。
ユミがその中を覗こうと恐る恐る近寄ると穴の中から突如何かが現れた。
ユミは一瞬怯んだ。だが、それが人の手だとわかると急いで駆け寄った。
「ジルさん!大丈夫ですか?!」
そう、現れたのはジルの手だったのだ。
ユミと差して変わらない大きさの手、指のところどろこにインクがついている。これは先程「落書き」をした時についたものだろう。
ユミはジルの手を掴み一気に引き上げた。
元々大人になって大して大きさが変化しないタルタル族だ。女性のユミにでもジルは楽々と持ち上げる事が出来た。

ドスン!

勢いで飛んだユミとジルは地面に尻餅をついてしまった。
「いったぁ・・・」
ユミはお尻をさすりながら立ち上がった。

「いやぁ助かったぁ」
まだ倒れているジルが天を仰いで言う。
そもそもこの世界に天などあるのか謎だけど・・・。足元の地だって存在しているのかどうか分からない。確かに立っている感覚はあるけど、影がないのだ。ユミもジルにも。
「層を間違えた。ユミが呼んでくれなかったらどうなってた事か・・・ん?どうした?」
ユミがあまりにもジルの事を凝視しているので、ジルは疑問に思った。
ユミが視線をそのままにジルに言った。
影が・・・影がないんです
「あぁ」
ジルはひとつ頷くと上半身を起こして自分の体の下に視線を送った。
ここはヤツの世界だから
「ヤツ?」
間違ってもオヤツではない。ユミは何故か母の顔が頭に浮かんだ。
お母さんだったら「オヤツ?」って突っ込むだろうなぁ。そんな事を思いながら・・・。
「厳密に言うとヤツの影の世界だけどねぇ」
ジルがオカシな事を言っている。
「ヤツの影って?」
「まぁそのへんは、ごほ~んにーんとごた~いめーんした時に・・」
ユミが聞き返そうとする事を阻止するかのようにジルは話を進めた。
そして立ち上がると振り返り遥か彼方の方角を向いた。ここでは目印になるものが何もないからそういうしかない。
どの方向とも言えない方角を向いたジルはゆっくりと言った。

問題は、ここを無事に通り抜けられるかどうかだ

何もない世界。ただただ真っ白な世界。この先に一体なにがあるのだろうか。
ユミはジルが見つめる先をただただ不安な気持ちで見つめるほかなかった。
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